まっさらのキャンバス、紙、布など「白」という色は、ただ無垢なだけではありません。それと対峙する様々なものを受け止めて淡々と転成する力が宿されています。
この作品は約2週間にわたってアメリカ・ニューメキシコ州にあるWhite Sands(ホワイトサンズ)で撮影しました。
White Sandsは、約700平方キロメートルにも及ぶ莫大な面積の砂丘地帯。全体が石膏の結晶でできており、その砂は熱を持ちません。風や陽光の向き、温湿度の差によって砂紋はたえず無感情のままに表情を変え、異なる色合いを発しています。しかも砂丘全体がまるで生き物のように、年間約10メートルも風下に向かい動き続けているといいます。その北部に、かつて広島と長崎に原爆が投下される3週間前に人類初の核実験が行われ、今もミサイル実験場として使われているトリニティ•サイトがあることでも知られています。
特異な自然が生み出した時間の芸術を追って、刻々と変化する豊かな砂の表情を切り取りました。
そして作品としては、時や風の流れをあらわした砂紋や太陽の光と影に加えて、トリニティ•サイトという場所が考えさせる意味を重ねました。
Music / toreno